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桃太郎 59 雉編

 それぞれ東西南北の入り口より洞窟に侵入した一行は散発して遭遇する鬼との戦闘を行いながら中央へと向かう。討ち漏らしなく、逃走と援軍を防ぎ、混乱させ中央へと集めた後に叩く為である。

 順調に作戦は進行していた。鬼達は一方へと打って出る動きはなく、一行は偵察と連絡を兼ねた鬼を倒しながら進むのであった。

 中央にたどり着くと剣戟鳴り響く乱戦が始まった。

 槍を手に奮戦する壮介の背後をカバーするように庚申が体術と投剣を用い、涼は近距離で弓と太刀折りを使い矢を放ち支援していた。桃太郎の姿だけがなかった。

「庚申、壮介、桃太郎はどこだ」

「まだ見とらんから西側の道の途中で何かあったんやろか」

「なぬ!助けに行かねば」

「行くな犬!桃太郎はんに任しとき」

「放っておけるか……って誰が犬かっ!」

「俺は行く」

「手は貸せんからな」

「涼、すまない」

「心配はない思いますけど涼はん、頼んますわ」

「ああ、任せろ」

 そう言い乱戦の中涼は桃太郎のいる方向へと駆け出して行く。

「こら犬!手を早よ手を動かして鬼倒さんか」

「うるさい庚申こそ……犬と言うなっ!」

 振り返り様、壮介の放つ槍を容易く避けた庚申、その庚申の背後にいた鬼に突き刺さる。

「避けるな庚申!」

「アホ!避けな死ぬわ」

「くそっ!こいつら他の鬼と動きが違う」

「誰ぞが指南したに動きやな、硬いけど知っとる体捌きがちらほらあるわ。なんや乱組みたいやな」

「何を悠長な」

「心の余裕は大事やで」

「額から汗流しながら言う言葉ではないな!」

「ヤバいようなら退くで」

「馬鹿を言え!このような機会……」

「ほな壮介一人置いてきますわ」

「さすがに……この数一人はだな」

「せやから、こないして残ってます……やろ!」

「そうだっ……た!」

 普段であれば武技を使わぬ鬼など敵ではないが、武技を用いて数で押されたのは二人には初めての出来事で鋭い一撃が絶えず襲う。その上、連携の修練も行われていて少しずつ二人の息が上がっていく。

「壮介はん、そろそろ厳しいんちゃいます?」

「庚申こそ、そろそろ堪えているんじゃないのか?」

 お互いが質問し合う形となり、互いに背後を合わせ訪ねあった。そして重なる言葉でその問いかけを否定した。

「「ははは」」

「「まだまだ」や!」

 お互いに顔を見て出た言葉は、互いの意地のような強がりであった。内心二人共に桃太郎と涼が戻るのを期待していた。

 戦いは続くなか、桃太郎の元へ向かった涼は不思議な光景に混乱しているのだった。